山居
さんきょ

ブランド米育む倉庫

酒田市役所にほど近い酒田市の中心部に、巨大倉庫が連なる一角があります。地名を採って山居倉庫と呼ばれ、いまや酒田観光になくてはならない存在となっています。

【1】間口7間半の大型倉庫がずらりと並びます。その数、実に12棟。
【2】倉庫の前面には下屋があり、ここで米の出し入れが行われます。
【3】屋根は二重構造とし、断熱性と調湿性を高めています。
【4】倉庫内の温度上昇を抑えるため、倉庫の背後には西日を除けるケヤキが植えられました。建設当初の苗木は、うっそうと茂る森に成長しています。


土蔵造りの倉庫。前面に下屋をおろす

江戸時代、西廻り航路の拠点としてにぎわった酒田は、明治以降も米の積出港として重要な港でした。その時代をしのばせるのが、最上川と新井田(にいだ)川に挟まれた中州の倉庫群、通称“山居倉庫”です。間口7.5間、奥行き16間の巨大倉庫群は、一部が観光施設として利用されているほかは、いまだに米蔵として使われています。

山居には江戸時代より米穀取引のための倉庫が並び、庄内藩の藩倉や商人の倉がありました。現存する倉庫群は鶴岡生まれの棟梁、高橋兼吉の設計によるものです。1893(明治26)年に最初の7棟が完成し、4年後までに合計14棟を数えました。現在では大正期に新築された1棟を含め、12棟で構成されています。


ケヤキ並木と倉庫群

倉庫1棟あたりの容積は1万5000トン。日除けとなるケヤキ並木、調温・調湿効果のある二重屋根、塩をまいて仕上げた土間など、伝統的な手法を用いた倉庫ですが、保管能力は機械管理された現代の倉庫にも劣らないといわれています。山居倉庫では入庫する米を厳しく審査し、保管中も厳重に管理しました。それが高い信用を生み、いつしか山居倉庫から出荷された米は「山居米」と呼ばれるようになったといいます。


断熱効果のある二重屋根

倉庫群の前には船着場があり、そこに降りるための石畳道も残されています。かつて最上川舟運では250俵を積めるひらた船が活躍しましたが、船着場の近くでは小回りの利く小鵜飼船(こうかいぶね)が使われました。山居倉庫では往時の小鵜飼船が復元展示されています。


展示されている小鵜飼船


船着場跡。建物は米穀研究室


倉庫には下流側から順に番号が振られている


【住所】山形県酒田市山居町1丁目
【公開施設】庄内米歴史資料館(冬季休館)
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(6)山形県』角川書店、1981年
『「最上川流域の文化的景観」調査報告書』山形県教育委員会、2011年
『別冊太陽 日本の町並み(3)関東・甲信越・東北・北海道』平凡社、2004年

2006年11月5日、15年7月4日撮


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