加茂
か も

富を蓄えた蔵並み

城下町・鶴岡の外港として整備された加茂は、酒田港入港前に北前船が寄港する港でもありました。いまでは小さな漁村となっていますが、廻船時代を彷彿とさせる古い民家も点在しています。

【1】加茂の家は間口が狭く、奥行きが長いのが特徴。裏通りには蔵が並んでいます。
【2】かつての廻船問屋、石名坂(いしなざか)家の蔵。質素な板張りですが、中の木材は漆塗りで仕上げられています。
【3】町のどこからでも山並みが見えます。三方を山に囲まれた加茂は天然の良港であり、城下町・鶴岡の外港として発展しました。

加茂は北前船の寄港地として栄えた港町で、江戸・明治時代にさかのぼる廻船時代の風景が残されています。港に近い一等地にあるのが、江戸時代に建てられた秋野家住宅。酒田の本間家に次ぐ庄内第二の大地主といわれた家です。間口の狭い家が多い加茂にあって、秋野家だけは敷地を板塀で囲み、ゆったりとした屋敷構えを見せています。


秋野家住宅

左が石名坂家住宅

秋野家住宅の裏の道を北へ進むと、もう1軒の幕末建築の石名坂家住宅があります。こちらは廻船業を営んだ家で、正面の軒下に航海の安全を祈る祈祷札がいまも掲げられています。敷地は縦長で、外見は簡素ですが、内部は部材に漆を塗った豪華なつくりになっているそうです。

石名坂家住宅からさらに裏の路地へ回ると、同家の蔵が威容を誇っています。幕末の建築で、主屋と同じように内部の木材は漆塗り仕上げとなっています。
この蔵のほかにも廻船業時代に米や海産物などの産品を貯蔵した蔵が点在し、往時の繁栄ぶりをしのぶことができます。


石名坂家の並びにある蔵

切妻の家並み

明治以降に鉄道網が発達すると、加茂は廻船都市としての役目を終え、漁村になりました。切妻屋根の家が建ち並ぶ現在の町並みは、漁村時代に入ってから形成されたものでしょう。港には漁具を収めた板倉も残されていました。


港に建つ板倉


路地裏に古民家が密集する

茅葺きの極楽寺


洋風の尾形家別館


【住所】山形県鶴岡市加茂字加茂
【公開施設】なし
【参考資料】
鶴岡市加茂地区自治振興会

2015年7月4日撮


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