銀山温泉
ぎんざんおんせん

垂直の町並み

大正時代の洪水を機に一斉に再建された銀山温泉は、日本では珍しい高層建築の町並みを見せています。町を彩る鏝絵やガス灯が、大正ロマンを演出しています。

【1】銀山川の両岸に、大正から昭和初期に建てられた木造3、4階建ての温泉旅館が建ち並びます。温井亨氏(東北公益文科大学)は「我が国の町並み景観としては例外的な垂直性の強い空間」と指摘しています。
【2】戸袋や壁面に鏝絵(こてえ)を入れます。
【3】街灯はガス灯です。やさしい光が温泉街の風情を引き立てます。

銀山温泉はその名の通り銀鉱夫の湯治場だったところで、江戸時代前期に銀山が衰退して以降、主に温泉場として発展しました。もともと温泉旅館は質素な茅葺きでしたが、大正時代の洪水後の再建事業により、現在の町並みが形成されました。


垂直性の強い独特の町並み

銀山温泉の古い町並みは、白銀橋から滝見橋までのおよそ150メートル。この区間に10軒の温泉宿のほか、土産物屋や食事処が軒を連ねています。
温泉宿は銀山川の両岸に建ち並び、木造ながら3〜4階建てにもなります。町並みの特徴が、これら建物の高さと、川を挟んで向かい合う建物の近さ。温井亨氏の報告によると「建物間の距離÷建物の高さ」は1〜2の間にあり、これが他の町並みでは見られない垂直性をもたらしているとのことです。

それぞれの建物にも見どころが多く、屋根付きの玄関や塔屋をそなえたり、戸袋に鏝絵(こてえ)を入れたり、華やかな印象です。また、客室の大窓から漏れる明かりやガス灯のやわらかな光が、旅情あふれる町並みを演出しています。


能登屋(左)と旅館永澤平八の鏝絵


古山閣は2階に四季の鏝絵を入れる


楼閣風の能登屋は銀山温泉のシンボル

切妻屋根をもつ古勢起屋別館

こうした特徴的な町並みは1986(昭和61)年に制定された「銀山温泉家並保存条例」によって守られています。条例では現存建築の景観維持はもちろん、新築に際しても景観に配慮した設計がなされるよう、非常に細かく規定されています。たとえば「照明器具、看板などは木製和風」といった具合です。こうした条例が定められ、守られていることも、住民の意識の高さを裏づけています。


古勢起屋別館前


小関館


【住所】山形県尾花沢市大字銀山新畑
【公開施設】なし
【参考資料】
「尾花沢市『銀山温泉家並保存条例』の12年間の成果に関する研究」温井亨著、『平成10年度日本造園学会研究発表論文集』所収

2013年2月11日撮


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