北ノ又
きたのまた

群れなす中門造り

北ノ又は五城目町の最も奥に位置する、戸数わずか5戸の集落。そのうち4戸が茅葺き民家ですが、常住1、公開施設1、空き家2と、消滅寸前の集落です。この光景、いつまで残ってくれることやら……。

【1】北ノ又の家は秋田県に多いL字平面の中門造り。いまなお茅葺きの家が4棟残りますが、これほどの茅葺き民家がまとまって見られる場所は全国的にも貴重です。
【2】大棟の先端に烏止まりと呼ばれる意匠があります。北ノ又では大棟に千木がなく、馬乗り(雪割り)もないため、この烏止まりが妙に存在感を発揮しています。
【3】これは観光用のトイレですが、北ノ又の家は基本的に別棟を建てません。便所は主屋内に設けられています。納屋もなく、種籾(たねもみ)は囲炉裏のある部屋に渡した木材に掛けて保管しました。

背後にブナの原始林、手前に棚田が広がる北ノ又。全5戸のうち4戸が茅屋根を見せています。その光景は、文字通り「日本のふるさと」。しかし住居として使われているのは1戸のみで、それ以外は1戸が観光施設、2戸が無住となっています。


一般公開されている「釣りキチ三平」の家

「釣りキチ三平」の家の馬屋部分。左手前の板張りの部分に籾を貯蔵した

一般公開されているのが、映画『釣りキチ三平』(2009年)のロケで使われた、その名も「釣りキチ三平」の家。向かって右側が突出したL字平面の中門造りで、突出部は馬屋や納屋となっています。
この家では、2頭の馬の飼育場所のすぐ横で1年分の籾(もみ)を保管していたようですが、家畜と食糧を同じ空間にまとめるなんて、いまでは考えられません。

居間にも納屋としての機能はありました。囲炉裏の斜め上にある2本の丸木がそれで、ここに種籾を掛けて保管したそうです。
豪雪地帯では冬の間の生活の便を考え、付属屋を建てず、1棟の主屋にすべての機能を集約させることが往々にしてあります。馬屋を合体させた中門造りや曲がり家はその典型ですが、家畜の飼育のほかにもさまざまな機能が集約されていたのですね。


右の丸木に種籾を掛けた

谷筋の傾斜地に集落が展開する


茅葺きの空き家


【住所】秋田県南秋田郡五城目町馬場目北ノ又(地図
【公開施設】「釣りキチ三平」の家(※
冬季休館)

2013年7月15日撮影


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