下戸沢
しもとざわ

茅葺きは健在

宮城県南西部を走る羽州街道沿いにあって、最も往時の面影を残す宿場町が下戸沢です。2階建ての堂々たる旅籠建築が残され、圧巻です。

【1】集落を貫く幅5メートルほどの道が羽州街道。出羽地方の大名が参勤交代で通った道です。
【2】集落の南に茅葺き建築が3棟残っています(写真では南端の1棟は写っていません)。
【3】こうして見ると入母屋造りのようですが、反対側には破風がなく、寄棟造りになっています。これは3棟すべてに共通するつくりです。

白石市郊外の羽州街道に、およそ3キロを隔てて2つの宿場町――下戸沢と上戸沢――があります。
上戸沢は1976(昭和51)年に白石市教育委員会が伝統的建造物群の保存対策調査を行い、国の重伝建選定を目指していましたが、結局は実現せずじまい。その後は古い家の建て替えや修繕が進んだらしく、わたしが訪れたときには、茅葺き建築は町外れに1軒あるだけでした。


上戸沢の茅葺き民家

下戸沢の町並み

いっぽうの下戸沢は街道筋に3軒の茅葺き民家がまとまって残され、壮観な宿場町風景を残していました。
これら3軒はいずれも平入り2階建てで建ちが高く、2階を客間として利用していたことがうかがえます。特徴的なのが屋根の形状で、北側から見ると入母屋造りなのに、南側は寄棟造りになっています。何かしらかの合理的な処理なのか、それともデザインとして流行したものなのか……。


南から見ると寄棟


北から見ると入母屋

下戸沢には茅屋根をトタンで修復した家も多く、それらも合わせると茅葺き建築の総数は10棟ほどになります。茅葺きの家はほとんどが平入りなのですが、新たに建て直された(といっても築40〜50年はたっていそうですが)瓦葺きの2階屋は、そろいもそろって妻入りです。東北の宿場町には妻入りの家が並ぶところが多いので(たとえば福島県の大内宿)、昔から平入りと妻入りが混在していたのだろうかと思いながら散策しました。
妻入りの瓦葺き建築が並ぶ

トタンで補修された茅葺き建築

茅葺きの納屋が残っている


【住所】宮城県白石市小原
【公開施設】なし

2014年5月16日撮影


戻る