村田
むらた

塗屋は門をしたがえて

村田は東北きっての商家町。豪壮な家々は、紅花の交易で財をなした商人が構えたものです。

【1】蔵造りの店舗が並びます。屋根を置き屋根とした家もあります。
【2】1階は全面開放とし、格子戸を入れます。
【3】店蔵のかたわらに門が付きます。主屋にはこの門をくぐってアプローチします。店蔵と門がつくる小気味良いリズムが、何ともいえない味わいをかもし出しています。

村田は山形、仙台、大河原(宮城県)へ通じる3本の街道の分岐点であり、古くから宿駅が置かれました。17世紀末になると毎月6度の市が立つ商都となり、18世紀にかけてに発展します。安永年間(1772〜1780年)になると地域の特産物である紅花(口紅や頬紅の原料)や木綿の集散地としていっそう栄え、商人が集住しました。こうして現在の町並みの原型が整えられたのです。

蔵造りの町並みの南端近くに建つ旧大沼家住宅(現・村田商人やましょう記念館)は、商都・村田でもとくに繁栄した1軒。敷地内には店舗や主屋を含め、14棟の建物が林立しています。大沼家では江戸時代後期より紅花の仲買を営み、その後は味噌・醤油の醸造も兼業しました。

村田の家のつくりはどこも共通しています。敷地は細長い短冊形。通りに面して平入りの店舗(店蔵)を建て、その背後に主屋を連結させ、さらに間隔をあけて2、3の蔵を配置するのが一般的です。店舗は蔵造りで、1階の袖壁や2階正面はなまこ壁で仕上げられています。


村田の店蔵は平入りだが、1棟だけ妻入りがある(右)

村田の商家。こうして見ると門の大きさに驚く

主屋には店舗に隣接する棟門をくぐってアプローチするのですが、この棟門も立派なつくりで見逃せません。欄間には格子や家紋の透かし彫りを入れたり、腕木に彫刻を施したり、家ごとに凝った装飾を見ることができました。


懸魚(げぎょ)のある門


黄檗宗(おうばくしゅう)寺院で見られる牌楼(はいろう)式の門

旧大沼家住宅の棟門。精緻な透かし彫りと木鼻装飾をもつ

この紋は大沼家の家紋らしく、いくつかの家で見られた


【住所】宮城県柴田郡村田町村田町
【公開施設】村田商人やましょう記念館(旧大沼家住宅)
【参考資料】
『東北民家史研究』草野和夫著、1991年
『写真でみる民家大事典』日本民俗建築学会編、柏書房、2005年

2014年5月19日撮影


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