北境
きたざかい
うろこの生えた家
宮城県北東部は建材になるスレート(粘板岩)の産地で、明治以降、屋根をスレート葺きとした家が増えました。北境は長屋門をもつ大型農家が連なる集落ですが、どの家も屋根にスレートをいただき、独特の集落景観をつくり出しています。 |
【1】屋根材にスレートを使っています。半円形に整形したスレートを互い違いに並べたさまは、まるで魚のうろこのようです。 |
本のページのように薄く割れるため頁岩(けつがん)と呼ばれる岩石のうち、硬く厚く割れる石がスレートです。ヨーロッパでは古くから屋根材や外壁材となり、日本では硯(すずり)の原材料として重宝されてきました。明治時代になると日本でも建材として使われ、洋風建築の屋根材に欠かせない存在となりました。 |
北境のスレート葺きの家の屋根 |
通りに沿って長屋門が続く |
当時から国内における一大産地だったのが宮城県北東部です。このあたりには屋根材にスレートを使った家が多く残っていますが、中でも北境では、主屋ばかりか門、納屋、蔵などもスレートで葺かれています。これらの建物の中には、新たにスレート葺きで建てられたもののほか、旧来の茅葺きから葺き直されたものも少なくありません。 |
北境は農村なのですが、どの家も長屋門を構えています。わずか10数戸の集落なのに、地主というか、豪農というか、とにかくそんな屋敷ばかりが集まった集落なのです。 長屋門の通行口にはくぐり戸つきの大戸が付けられ、欄干には透かし彫りの装飾も入れられていました。 |
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門の欄間には精緻な彫刻が施されている |
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田舟を掛けた門 |
また、集落の奥のほうの1軒は、長屋門の天井に小船を掛けていました。長さ1.5メートルほどの、人ひとりがやっと乗れるくらいの小さな船です。お話を聞いたところ、田んぼが整備される前に使っていた田舟だそうです。こうした民俗資料が「いつでも使える」といった感じで残されているのを見て、嬉しくなってしまいました。 |
田舟のある家は土蔵もスレート葺きだった |
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四角く切り出したスレートを葺いた主屋もある |
納屋もスレート葺き |
2014年5月19日撮影 |