大籠
おおかご

茅葺き民家の隠れ里

一関市南東部は全国屈指の茅葺きの里。中でも宮城県との県境に接する大籠には10棟ほどが現存します。岩手県では最大の茅葺き集落ではないでしょうか。

【1】大籠の民家は寄棟造り。間口7、8間ほどの家が多く、屋根も大迫力です。
【2】腰屋根も茅で葺いたものが見られます。厚く葺くのは、雪対策でしょうか。
【3】腰屋根にも箱棟を載せているのがすごいと思いました。しかも、箱棟の横材は先端を寺社建築の「木鼻」のように仕上げています。気仙大工の手によるものでしょうか。

私は古い町並みや集落、民家の中でも、とりわけ茅葺きに大いなる関心を抱き、全国各地を旅しています。しかしつい最近まで、一関市が一大茅葺き地帯であるということをまったく知りませんでした。この地域の情報は秋田県の屋根葺き職人さんにうかがい、旧千厩(せんまや)町の村上家住宅で開かれた「かやぶき祭り」に合わせて訪問したところ、聞けば全市で50〜60棟の茅葺き民家が残されているとのことで、たいへん驚かされました。


村上家住宅(千厩町)

大籠の民家。大棟の横材に木鼻がある

一関市の茅葺き民家は旧千厩町、旧藤沢町に多く、中でも現存率が高い集落が大籠です。ここは江戸時代にキリシタンが迫害された土地として全国的に知られていますが、私から見ればキリシタンの隠れ里ならぬ「茅葺き民家の隠れ里」といった印象でした。


大籠の民家はほとんどが寄棟造り


主屋と付属屋(納屋か)がともに茅葺きの家
大籠の民家は寄棟造りで、大棟に煙出しの腰屋根を載せている点が特徴です。腰屋根のつくりは家ごとにさまざま。特徴的な茅葺きの腰屋根は、その上にさらにトタン葺きの箱棟をいただき、厳重に、かつ繊細に仕上げられている点が印象的でした。
2軒の茅葺き民家。奥の家の腰屋根は茅葺き

このページで紹介した民家は、すべて「かやぶき祭り」で行われたバスツアーで撮影したものです。ツアーで聞いた話によると、地域には茅葺き民家の宝庫としての自覚があるものの、空き家も増えており、保存・活用が課題とのことでした。


【住所】岩手県一関市藤沢町大籠(地図
【公開施設】なし

2015年11月22日撮影


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