松川
まつかわ

一・六市場の町

昭和初期まで市が立ったという松川は、旧道沿いに切妻の土蔵造りが並ぶ在郷町でした。風格ある商家のたたずまいが、その繁栄の歴史を教えてくれます。

【1】松川は砂鉄川に注ぐ小川を挟んで向かい合う2つの町からなります。右岸(北岸)のこちらが一市町(ひといちまち)。
【2】そして左岸のこちらが六日町です。かつて1と6の日に市が立ったそうですが、その歴史をしのばせる地名です。
【3】町家は通りに面して店蔵を建て、その奥に主屋を配置します。土地の制約からか、多くが妻入りでした。

旧東山町の松川は砂鉄川の両岸の平地に開けた地域で、右岸をJR大船渡線が走ります。当地には陸中松川駅がありますが、旧市街地(六日町、一市町)は駅から4キロも離れており、むしろ一ノ関側にひと駅行った岩ノ下駅が最寄りとなっています。


一市町の町並み。真壁造りが散見される

一市町から六日町方面を見る

ここでは昭和初期まで1と6の日に市が開かれました。資料には明記されていませんでしたが、北の一市町で1の日に、南の六日町で6の日に、それぞれ市が立ったのでしょう。かつては宿駅も置かれ、交通の要衝としても賑わったそうです。

松川の商家は間口が狭くて奥行きが長い「うなぎの寝床」。通りに面して店蔵を建て、その後ろに主屋や土蔵を連ねています。店蔵はほとんどが妻入り。前面に半間ほどの下屋を出し、そこを商売空間としました。


店蔵の背後に主屋や土蔵を建てる

2階正面の庇を支える持ち送りも立派だ

外観のデザインでは、2階の窓の上部に庇を設ける家が多く見られました。この庇は下に垂木(たるき)が入れられ、何と放射状の扇垂木としている家もありました。ここまで凝ったつくりにするとは! 明治以降、岩手県南部で活躍した気仙大工の腕によるものなのかもしれません。


腰壁を亀甲のなまこ壁とする


【住所】岩手県一関市東山町松川一市町、東山町松川六日町(地図
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(3)岩手県』角川書店、1985年

2014年8月3日撮


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