釣屋浜
つりやはま

敷かれた小石はすぐれモノ

かつてイカ釣り漁で賑わった釣屋浜も、高齢化によって漁師は激減し、いまはひっそりと静まり返っています。しかしここでは、漁村ならではの仕掛けをいくつも見ることができました。

【1】いまは堤防が築かれ、道もコンクリートで舗装されていますが、かつては家の裏手に砂浜が広がっていました。
【2】主屋も付属屋もみんな板張り。潮風による浸食を少しでも遅らせるためでしょう。
【3】納屋や主屋の通用口のまわりに川原石を敷き詰めます。こうしておくと水はけがよくなり、漁具や長靴も乾きやすいのだそうです。

国道279号線に沿って両側に板張りの家が連なり、一見すると商家町のようでもある釣屋浜。けれども、それぞれの家と家の間には幅1メートルほどの路地が走り、表通りと砂浜との往来を確保するなど、漁村特有の「仕掛け」も見て取れます。
納屋などの付属屋はすべて板張り。潮風にあらがい続けてきた漁村の力強さを感じます。


木造家屋が並ぶ釣屋浜の表通り


表通りと浜を結ぶ路地。板張りの壁が両側から迫ってくるかのよう

かつて釣屋浜はイカ漁の盛んな土地でしたが、高齢化が進み、いまでは漁をする家は数えるほど。ほとんどの家が細々と家庭菜園を営み、生活資金は年金から得ていると聞きました。

納屋の前には玉石を敷く
釣屋浜の漁家では、主屋や納屋のまわりに玉石を敷いています。「砂地であるため、足元を固める必要があったのか」とも思いましたが、理由は別のところにありました。
これらの玉石は、水はけをよくするためのもの。ぬれた漁具や長靴をこの上に置いておくと、すぐに乾くのだそうです。お話を聞いたお宅でためしに水を撒いてもらいましたが、なるほどすぐに引いていきました。

水を撒いても溜まることなく、すぐに乾く
この小石の「仕掛け」は、浜側にある多くの家で見られました。聞けば、いちど太平洋に流れた川原石が時化(しけ)のときに打ち上げられるので、それを拾って並べるのだそうです。
この小石は、冬になれば「暖房器具」に早代わり。
「子どものころ、婆さんが小石を囲炉裏で暖めてくれて、登校するときはそれを布にくるんでもたせてくれた」と聞きました。

家並みの間近に海が迫る


釣屋浜には頑丈そうな木造住宅が多い

いわれてみればここは雪国。家々は潮風に抗するだけでなく、冬の寒さにも適応しなくてはならなかったはずです。多くの家で2階の窓が二重になっているのも、おそらくは防寒対策でしょう。

妻入りの家が並ぶ

前庭で魚が干されていた


【住所】青森県むつ市大畑町釣屋浜(地図
【公開施設】なし

2013年7月14日撮影


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