倉内
くらうち

湖上に浮かぶ小屋

倉内は淡水と海水が入り混じった小川原湖に面する漁村です。ここでは「マテ小屋」と呼ばれる、旧時代の漁で使われた建築を見ることができます。屋根が朽ちかけ、案内板も何もなく、ただひっそりと湖上にたたずむだけですが、今後の保存・活用に期待したいと思います。

【1】小川原湖の湖尻、高瀬川に流出する付近に3棟のマテ小屋が並んでいます。
【2】かつてはマテ小屋の下に網を張り、小川原湖と高瀬川を行き来する魚を獲っていました。漁師は小屋の中で魚がかかるのを待ったことから、マテ小屋の名が付けられました。
【3】小屋の足元にある杭の間に柴などを刺し、網の中に入った魚が外に逃げないようにしていました。

青森県最大の湖の小川原湖は、魚介類が豊富であることから「宝湖」とも呼ばれています。とくにシジミやシラウオ、ワカサギが多いことで知られ、いまも漁業が盛んな土地です。
小川原湖が太平洋に注ぐあたりは淡水と海水が混じった汽水域となっています。ここに3棟のマテ小屋が復原されています。かつて漁師たちは、マテ小屋の下に網を張り、淡水と海水の間を行き来する魚がかかるのを待ちました。これをマテ漁(待て漁)といい、漁師が待機するための小屋がマテ小屋というわけです。


マテ小屋は板張りの小さな小屋。出入口は妻面にある
3棟のマテ小屋は2003年に復原されたものです。これは文化財継承のためのものであって、いまはマテ漁は行われていません。
しかしいずれの小屋も復原から10年を経過し、遠目にも傷みが目立っていました。「マテ漁体験ツアー」などで活用するのもひとつの手ではないかと思いましたが、今後これらの小屋はどうなってしまうのでしょうか。
さて、マテ小屋をもつ倉内の集落は、小川原湖畔から200メートルほど北の高台にあります。そこでは立派な木造家屋が見られ、思わず時間を割いて散策してしまいました。話を聞いたところ1955(昭和30)年ごろに集落を焼く大火があり、いずれの家もそのあとで建て直されたのだそうです。
大きな玄関を備える家が目につく


寺院風の木組みが見事

倉内の家には寺院風の木組をもつものが多く、せがい造り、二重せがい造りとしている家もありました。多くが本2階建てであるため、非常に建ちが高く、迫力のある家ばかりです。土地の人の話では、腕の立つ大工がいたわけではなく、こうしたつくりが当時の倉内ではやったのだそうです。


二重せがい造りの大型民家

湖岸近くには平屋の家が多い


【住所】青森県上北郡六ヶ所村倉内(地図/集落マテ小屋
【公開施設】なし

2013年7月14日撮影


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