稲垣
いながき

干拓地の風景

津軽半島中西部の稲垣は、江戸時代に開拓された新田集落です。田んぼを分かつ直線道路に沿って、茅葺き民家が見られます。

【1】稲垣は近世の干拓で生まれた稲作地帯。あたりは一面の田んぼです。
【2】茅葺き民家の多い津軽の中でも、稲垣は屈指の現存数を誇ります。
【3】敷地の西側を重点的に立板で囲みます。日本海からの風を防ぐためのもので、カッチョといいます。

つがる市稲垣は岩木川左岸の低地にある農村地帯。2005年までは稲垣村として独立していました。このあたりは江戸時代初期までは未開の土地で、17世紀後半の新田開発政策によって人々が定住しました。低湿地帯ゆえ水害・塩害を受けやすく、日本海から吹き込む風や砂に悩まされる土地でしたが、水路を開き、沿岸部の屏風山に植林を行うことでこれを克服しました。


干拓地らしい直線道路と茅葺き民家

冠木(かぶき)門を構えた家
稲垣の風景はこうした歴史を物語るかのように、平坦な田園地帯に直線道路が引かれています。そしてその道端に、ひとつ、ふたつと茅葺き民家がたたずんでいます。連続した町並みにはなっていませんが、稲穂の海に浮かぶ民家は存在感もあって、稲垣らしい風景だと思います。

民家はカッチョと呼ばれる板囲いをもちます。日本海からの風を除けるための装置です。家が新築で建て直されたあとも、カッチョはそのまま残されることが多いのですが、やはりカッチョは茅葺きに似合う気がします。


カッチョと茅葺き民家


移築復元された旧尾野家住宅


茅葺き民家が2棟


【住所】青森県つがる市稲垣町豊川宮川(旧尾野家住宅)(地図
【公開施設】なし
【参考資料】
『角川日本地名大辞典(2)青森県』角川書店、1985年

2016年9月19日撮影


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